SCAPULA / POSTURE / SHOULDER MOVEMENT

肩甲骨と
姿勢の関係。

肩甲骨を寄せれば、
姿勢は良くなる?

猫背や巻き肩が気になると、
「肩甲骨を寄せましょう」と言われることがあります。

しかし肩甲骨は、
ただ背中に固定されている骨ではありません。

腕の動きや胸郭の状態に合わせて、
位置や向きを変えながら動いています。

SCAPULA
THORAX
SHOULDER
MOVEMENT

QUICK ANSWER

先に結論から。

姿勢を良くするために、

肩甲骨を常に寄せておく必要はありません。

肩甲骨は、
腕を上げたり前へ伸ばしたりするときに
動くことが必要な骨です。

また肩甲骨の位置や動きは、
肩甲骨だけで決まるわけではありません。

胸郭の形や姿勢、
腕の位置、
行っている動作などによっても変化します。

そのため、
「肩甲骨が外にあるから悪い」
「肩甲骨を寄せれば正解」
と一つの形だけで判断するのは、
身体を単純化しすぎています。

THE SCAPULA IS MADE TO MOVE.

肩甲骨は、
動くための骨。

「正しい位置」に固定するのではなく、
動作の中でどう動くかを見る。

01 / SCAPULA

そもそも、
肩甲骨とは?

肩甲骨は、
背中側にある左右一対の骨です。

上腕骨や鎖骨と関係しながら、
肩を構成しています。

特徴的なのは、
肩甲骨が胸郭の上を滑るように動くことです。

腕を上げるときには、
上腕骨だけが動いているわけではありません。

肩甲骨も上向きに回転したり、
後ろへ傾いたり、
外側へ向きを変えたりしながら
腕の動きに関わります。


肩甲骨は、
一か所に固定される骨ではなく、
腕の動きに合わせて位置や向きを変える骨です。

02 / MOVEMENT

肩甲骨は、
いろいろな方向へ動く。

01
UP / DOWN

上がる・下がる

肩をすくめるような動きでは上へ、
下げる動きでは下方向へ移動します。

02
IN / OUT

内側・外側へ動く

背骨へ近づく動きだけでなく、
腕を前へ伸ばすときには
外側へ動くことも必要です。

03
ROTATION

回転する

腕を高く上げるときには、
肩甲骨も上向きに回転していきます。

04
TILT

傾きが変わる

腕の位置に合わせて、
肩甲骨の前後方向の傾きも変化します。

つまり、
肩甲骨が背骨から離れていること自体を
「悪い状態」と考えることはできません。

例えば腕を前へ伸ばせば、
肩甲骨が外側へ移動するのは自然な動きです。

一方で腕を後ろへ引けば、
肩甲骨は内側へ近づきます。


必要なのは、
一つの位置に固定することではなく、
目的の動作に合わせて動けることです。

03 / POSTURE

では、肩甲骨と姿勢は
どう関係する?

肩甲骨は、
胸郭の上に位置しています。

そのため、
胸郭の形や身体の姿勢が変われば、
肩甲骨の位置や動きも変わる可能性があります。

実際に、
胸椎を丸めた姿勢と
より起こした姿勢を比較すると、
肩甲骨の動きや
肩関節の可動域が変化することが報告されています。

ここで大切なのは、

「肩甲骨が姿勢を作る」
という一方向の関係ではない

ということです。

胸郭の状態によって肩甲骨が変わり、
腕の動きによって肩甲骨が変わり、
肩甲骨の動きもまた肩の動作に関わります。

KEY POINT

肩甲骨だけを、
身体から切り離さない。

肩甲骨を見るときは、
胸郭・肩関節・腕の動きなどと
一緒に考える必要があります。

04 / RETRACTION

「肩甲骨を寄せる」は、
いつでも正解?

猫背や巻き肩に対して、
「肩甲骨を寄せて胸を張る」
という方法がよく使われます。

肩甲骨を内側へ動かすこと自体は、
身体が持っている正常な動きの一つです。

しかし、
その位置にずっと固定することが
良い姿勢とは限りません。

腕を前へ伸ばしたり、
頭上へ上げたりするときには、
肩甲骨が外側へ動いたり、
上向きに回転したりする必要があります。


「寄せる能力」と同じように、
必要なときに離れて動ける能力も必要です。

05 / NORMAL POSITION

「肩甲骨の正しい位置」は
一つではない。

肩甲骨について調べると、
「正しい肩甲骨の位置」
という表現を見かけることがあります。

もちろん、
解剖学的に肩甲骨の位置や角度を
説明することはできます。

しかし、
実際の人間の肩甲骨の位置や動きには
個人差があります。

2025年のシステマティックレビューでも、
症状のない人の肩甲骨運動には
大きなばらつきが確認されています。

さらに、
肩の痛みがある人とない人を比較しても、
肩甲骨の動きだけから
明確に正常・異常を区別することは
簡単ではありません。


見た目の位置だけを見て、
「ここから何度ずれているから悪い」
と判断することには注意が必要です。

06 / SCAPULAR DYSKINESIS

「肩甲骨がうまく動いていない」とは?

肩甲骨の動きについては、
「Scapular Dyskinesis
(肩甲骨の運動異常・運動の変化)」
という言葉が使われることがあります。

ただし、
肩甲骨の動きが他の人と違うからといって、
それだけで病気や痛みの原因だと
決められるわけではありません。

肩甲骨の評価方法そのものについても、
研究では測定精度や解釈に
限界があることが指摘されています。

そのため、

肩甲骨だけを見て、
身体全体の問題を判断しないこと

が重要です。

07 / TRAINING

肩甲骨のトレーニングは、
何をすればいい?

01
MOBILITY

動ける範囲を確認する

肩甲骨だけでなく、
胸郭や肩関節を含めて
必要な動きがあるか確認します。

02
CONTROL

動きをコントロールする

肩甲骨を一方向へ固定するのではなく、
腕の動きに合わせて
コントロールすることを考えます。

03
STRENGTH

必要な筋力をつける

前鋸筋や僧帽筋など、
肩甲骨の動きに関わる筋肉を
目的に応じてトレーニングします。

04
INTEGRATION

腕の動きにつなげる

最終的には、
押す・引く・腕を上げるなど
実際の動作の中で使えるようにします。

肩甲骨だけを動かす練習が
必要な場合もあります。

一方で、
腕を上げる、
押す、
引くといった動作の中で
肩甲骨を使うことが必要な場合もあります。


何をするかは、
「肩甲骨」という部位名から決めるのではなく、
現在の身体と目的から考えます。

09 / STUDIO KOMPAS

KOMPASでは、
肩甲骨をどう見るか。

ここまで説明した肩甲骨の解剖や運動学は、
STUDIO KOMPAS独自の考え方ではありません。

KOMPASでは、
こうした一般的な身体の仕組みを土台として、
実際の身体評価に当てはめます。

肩甲骨がどこにあるかだけではなく、
腕を動かしたときにどう動くのか。

胸郭や肩関節はどう動いているのか。

筋力や可動性はどうか。

そうした情報を合わせながら、
必要なトレーニングを考えます。


「肩甲骨を正しい位置に直す」ことから始めるのではなく、
現在の身体と目的の間に何が必要かを見る。

REFERENCES

参考文献

  1. Fernández-Matías R, et al.
    Scapular kinematics variability in individuals with and without
    rotator cuff-related shoulder pain:
    A systematic review with multilevel meta-regression.
    Braz J Phys Ther. 2025;29(6):101261.
  2. Kebaetse M, McClure P, Pratt NA.
    Thoracic position effect on shoulder range of motion,
    strength, and three-dimensional scapular kinematics.
    Arch Phys Med Rehabil. 1999;80(8):945-950.
  3. D’hondt NE, Pool JJM, Kiers H, Terwee CB, Veeger DHEJ.
    Validity of Clinical Measurement Instruments Assessing Scapular Function:
    Insufficient Evidence to Recommend Any Instrument for Assessing
    Scapular Posture, Movement, and Dysfunction.
    J Orthop Sports Phys Ther. 2020;50(11):632-641.
  4. Struyf F, Nijs J, Baeyens JP, Mottram S, Meeusen R.
    Scapular positioning and movement in unimpaired shoulders,
    shoulder impingement syndrome, and glenohumeral instability.
    Scand J Med Sci Sports. 2011.

本記事は一般的な解剖学・運動学および研究知見を整理したもので、
個別の肩の痛みや疾患を診断するものではありません。
痛みや外傷、強い可動域制限がある場合は、
医療機関など適切な専門家へご相談ください。

AUTHOR / SUPERVISOR

執筆・監修

山岸 慎

STUDIO KOMPAS創業者・パーソナルトレーナー|NSCA-CSCS


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MOVE, DON’T JUST HOLD.

肩甲骨は、
固定するより動かす。

寄せる。離れる。回転する。傾く。

一つの「正しい位置」に当てはめるのではなく、
胸郭や肩関節と一緒に
動作の中で考えることが大切です。

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