HIP / RANGE OF MOTION / TRAINING
「股関節が硬い」
とは?
硬い=筋肉が硬い。
とは限りません。
前屈しにくい。
しゃがみにくい。
脚を開きにくい。
こうした状態をまとめて
「股関節が硬い」と表現することがあります。
しかし実際には、
どの方向へ動きにくいのか、
何が動きを制限しているのかによって
考え方は変わります。
QUICK ANSWER
まず、結論から。
「股関節が硬い」は、
一つの状態を表す言葉ではありません。
股関節は、
前後だけではなく、
横方向や回旋方向にも動く関節です。
そのため、
「前には動くけれど回旋しにくい」
「片側だけ動きにくい」
といったこともあります。
また動きにくさには、
筋肉などの軟部組織だけでなく、
骨の形態や関節の構造、
力を出す能力、
動作のコントロールなど
複数の要素が関係します。
だから、
股関節が硬い=とにかくストレッチ
とは考えません。
MOBILITY IS MORE THAN FLEXIBILITY.
動く範囲と、
動かせる能力は
同じではない。
柔らかさだけではなく、
関節・筋力・コントロールを考える。
01 / HIP JOINT
股関節は、
どんな関節?
股関節は、
骨盤側のくぼみに
大腿骨の丸い骨頭がはまる構造をしています。
この構造によって、
脚をさまざまな方向へ動かすことができます。
代表的な動きには、
曲げる・伸ばす、
外へ開く・内へ閉じる、
内側・外側へ回すといったものがあります。
つまり「股関節の柔軟性」は、
一つの方向だけでは判断できません。
02 / MOVEMENTS
股関節には、
複数の動きがある。
FLEXION / EXTENSION
曲げる・伸ばす
膝を胸へ近づける動きが屈曲、
脚を後方へ動かす方向が伸展です。
ABDUCTION / ADDUCTION
開く・閉じる
脚を身体の外側へ動かす外転と、
内側へ動かす内転があります。
INTERNAL ROTATION
内側へ回す
大腿骨を内側方向へ
回旋させる動きです。
EXTERNAL ROTATION
外側へ回す
大腿骨を外側方向へ
回旋させる動きです。
例えば、
開脚が苦手だからといって、
股関節のすべての方向が
動きにくいとは限りません。
反対に、
前屈ができても
股関節の回旋が小さいこともあります。
「股関節が硬い」ではなく、
「どの方向が動きにくいのか」を見ることが
最初のポイントです。
03 / WHY
なぜ、股関節は
動きにくくなる?
01 / SOFT TISSUE
筋肉・軟部組織
筋肉などの組織が
関節の動く範囲に影響することがあります。
02 / JOINT STRUCTURE
関節・骨の構造
股関節の骨形態には個人差があります。
そのため全員が同じ方向へ
同じ角度まで動くとは限りません。
03 / STRENGTH
筋力
関節が動く範囲があっても、
その位置まで自分の力で
動かせないことがあります。
04 / CONTROL
動作のコントロール
身体を安定させながら
股関節を動かす能力も、
実際の動きに関係します。
04 / STRUCTURE
ストレッチでは変わらない
要素もある。
股関節の動きを制限するものが
すべて筋肉とは限りません。
股関節は、
大腿骨と骨盤の形状によっても
動ける範囲が影響を受けます。
そのため、
ある方向へ動かしたときの
「詰まる感じ」が、
必ず筋肉の硬さを意味するわけではありません。
身体の構造によって決まる範囲を、
無理にストレッチで広げようとする必要はありません。
05 / RANGE OF MOTION
可動域は、
広いほど良い?
可動域は、
関節を動かすことのできる範囲を表します。
では、
股関節はできるだけ柔らかくして
可動域を大きくすれば良いのでしょうか。
必ずしもそうではありません。
必要な可動域は、
日常生活、
トレーニング種目、
スポーツなどによって変わります。
また股関節可動域には
個人差があることも研究で確認されています。
大切なのは最大限に柔らかくすることではなく、
自分が行いたい動作に必要な範囲を持つことです。
KEY POINT
「180度開脚」を、
全員の目標にする必要はない。
目標とする身体能力は、
その人が行いたい活動によって変わります。
06 / PASSIVE & ACTIVE
「動く」と「動かせる」は、
少し違う。
PASSIVE RANGE
他の力を使えば動く
手で脚を押したり、
重力や補助を利用したりしたときに
動くことのできる範囲。
ACTIVE RANGE
自分の力で動かせる
自分の筋力を使って
コントロールしながら
動かすことのできる範囲。
ストレッチをすると
脚は大きく動く。
しかし自分の力では
その位置まで動かせない。
このような場合、
必要なのはさらにストレッチすることだけとは限りません。
広がった範囲を自分でコントロールするために、
筋力トレーニングが必要になることもあります。
07 / STRETCHING
ストレッチは、
意味がない?
いいえ。
ストレッチは、
関節可動域を広げるために使える方法の一つです。
長期間の静的ストレッチによって
筋のスティフネスが低下する可能性を示した
メタ解析もあります。
ただし、
「股関節が硬い」という言葉だけを理由に
全員が同じストレッチを行う必要はありません。
何を改善したいのかによって、
ストレッチを使うかどうかを考えます。
08 / STRENGTH TRAINING
可動域を広げる方法は、
ストレッチだけではない。
筋力トレーニングでも、
関節可動域が改善することがあります。
2021年のシステマティックレビュー・メタ解析では、
筋力トレーニングとストレッチを比較した結果、
可動域改善について両者に有意な差は
確認されませんでした。
これは、
ストレッチが不要という意味ではありません。
可動域にアプローチする方法は
一つではないということです。
METHOD 01
ストレッチ
必要な方向の可動域へ
アプローチする方法。
METHOD 02
筋力トレーニング
大きな動作範囲を使いながら、
筋力と可動域の両方へ働きかける方法。
METHOD 03
動作練習
実際の動作の中で
必要な範囲を使う練習。
09 / SQUAT
「しゃがみにくい」=
股関節が硬い?
深くしゃがめないと、
「股関節が硬いですね」
と言われることがあります。
しかしスクワットは
股関節だけで行う動作ではありません。
股関節。
膝。
足関節。
体幹。
それぞれが関係して
一つの動作になります。
足幅やつま先の向きが変われば、
股関節に必要な動きも変わります。
一つの動作が苦手だからといって、
一つの関節だけを原因にすることはできません。
10 / LOW BACK
股関節が硬いと、
腰痛になる?
「股関節が硬いから腰痛になる」
という説明もよく見かけます。
股関節可動域と腰痛の関連については
研究されていますが、
単純な因果関係が確立しているわけではありません。
2019年のシステマティックレビューでは、
非特異的腰痛と股関節可動域の関連を支持する証拠は
全体として非常に低い質と評価されました。
「股関節が硬いから腰が痛い」
と一つの原因に決めつけないことが重要です。
11 / HOW TO THINK
股関節が気になるとき、
何を見る?
どの方向か
曲げにくいのか、
伸ばしにくいのか、
回しにくいのか。
左右差はどうか
左右を比較し、
どの動きに違いがあるか確認する。
他動と自動の差
補助すれば動くのか、
自分の力でも動かせるのか。
目的に必要か
その可動域が
実際に行いたい動作に必要なのか。
12 / STUDIO KOMPAS
KOMPASでは、
股関節をどう見るか。
ここまで説明した股関節の構造や可動域、
ストレッチ・筋力トレーニングに関する内容は、
STUDIO KOMPAS独自の理論ではありません。
KOMPASでは、
こうした一般的な解剖学・運動学・研究知見を
身体を見るための土台として使います。
「股関節が硬い」という言葉だけから
トレーニングを決めるのではなく、
どの方向が動きにくいのか。
自分の力ではどこまで動かせるのか。
スクワットなどの動作では
実際にどのように身体を使っているのか。
そうした情報を確認して、
必要な方法を考えます。
「柔らかくすること」を目的にするのではなく、
その人の目的に必要な身体能力を考える。
13 / FAQ
よくある質問。
股関節が硬い人はストレッチした方がいいですか?
ストレッチが適する場合はありますが、
動きにくい理由によって方法は変わります。
まずどの方向の可動域が不足しているのかを
確認することが重要です。
筋トレでも股関節は柔らかくなりますか?
筋力トレーニングでも
関節可動域が改善することがあります。
特に十分な動作範囲を使うトレーニングは、
可動域と筋力の両方へ働きかける方法の一つです。
股関節は柔らかいほど良いですか?
必ずしもそうではありません。
必要な可動域は、
日常生活やスポーツ、目的によって変わります。
左右の股関節の硬さが違うのは異常ですか?
左右差があるというだけで
異常とは判断できません。
差の大きさ、症状、実際の動作などを
合わせて考える必要があります。
REFERENCES
参考文献
-
Afonso J, et al.
Strength Training versus Stretching for Improving Range of Motion:
A Systematic Review and Meta-Analysis.
Healthcare. 2021;9(4):427. -
Takeuchi K, et al.
Long-term static stretching can decrease muscle stiffness:
A systematic review and meta-analysis.
Scand J Med Sci Sports. 2023. -
Freiberger C, Mulcahey MK.
Hip Range of Motion During Passive and 1-Leg Exercises
Is Greater in Women:
A Meta-analysis and Systematic Review.
Arthroscopy. 2024;40(2):495-512.e3. -
Avman MA, et al.
Is there an association between hip range of motion
and nonspecific low back pain?
A systematic review.
Musculoskelet Sci Pract. 2019.
本記事は一般的な股関節の解剖学・運動学と
研究知見を整理したものです。
股関節周辺に痛み、外傷、強い可動域制限などがある場合は、
医療機関など適切な専門家へご相談ください。
FIND WHAT LIMITS THE MOVEMENT.
「硬い」で終わらず、
何が必要かを見る。
どの方向が動きにくいのか。
どこまで自分で動かせるのか。
その可動域は目的に必要なのか。
股関節を考えるときは、
「柔らかい・硬い」の二択ではなく、
身体と動作の関係から考えることが大切です。
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