TRAINING SCIENCE / EXERCISE SELECTION

片脚か。
両脚か。

トレーニングの効果は、
どちらが優れているのか。

スクワットとブルガリアンスクワット。
両脚で行うトレーニングと、
片脚を中心に行うトレーニング。

片脚の方が身体の安定性を鍛えられる。
両脚の方が重い重量を扱える。
そうした違いはありますが、
筋力や筋肥大の効果も異なるのでしょうか。

2025年と2026年の研究をもとに、
それぞれの特徴と
トレーニングでの使い分けを考えます。

UNILATERAL
VS
BILATERAL

QUICK ANSWER

どちらが優れているかは、
何を伸ばしたいかで変わる。

現在の研究では、
片脚・片側の筋力を高めるには片側トレーニング、
両脚・両側の筋力を高めるには両側トレーニングが
有利になる傾向が示されています。

一方、筋肥大については、
両者の間に統計的に明確な差は
検出されていません。

01 / STRENGTH
筋力

練習した動作に近い能力が伸びやすい傾向

02 / HYPERTROPHY
筋肥大

現時点で明確な優劣は確認されていない

03 / PERFORMANCE
運動能力

評価する動作によって結果が異なる

※「有意差が検出されない」ことは、
どの条件でも完全に同じ効果が得られると
証明されたことを意味しません。

01 / DEFINITION

片側性と両側性。
何が違う?

トレーニング科学では、
片側を中心に力を発揮する運動を
ユニラテラル(Unilateral)、
左右の四肢を同時に使う運動を
バイラテラル(Bilateral)と呼びます。

UNILATERAL

片側性トレーニング

片脚・片腕を中心に行う

ブルガリアンスクワット
ステップアップ
片腕ダンベルプレス

主に片側の四肢を使って力を発揮する方法です。
片脚支持や片側への荷重など、
種目に応じた身体のコントロールが求められます。

BILATERAL

両側性トレーニング

両脚・両腕を同時に使う

バックスクワット
レッグプレス
バーベルベンチプレス

左右の四肢を同時に使って力を発揮する方法です。
種目によっては高い外部負荷を扱いやすく、
両側での力発揮を練習できます。

IMPORTANT

ブルガリアンスクワットは、
後ろ脚も支持に関与します。
片側性という分類は、
必ず片脚だけが身体を支えるという意味ではありません。

02 / SCIENTIFIC EVIDENCE

2026年の研究で、
何が分かったのか。

2026年7月16日、Xinらは
片側性トレーニングと両側性トレーニングの効果を
比較した系統的レビュー・メタ解析を発表しました。

BMC SPORTS SCIENCE, MEDICINE AND REHABILITATION / 2026

24件のランダム化比較試験を統合

24
RANDOMIZED TRIALS
588
PARTICIPANTS
2026
PUBLICATION

対象研究にはレジスタンストレーニングだけでなく、
プライオメトリクスや複合的なトレーニングも含まれます。
24研究すべてが筋肥大を評価したわけではありません。

① 片側の筋力

片側で発揮する筋力については、
片側性トレーニングが
両側性トレーニングより有利でした。

統合効果量はHedges’ g = 0.42。
95%信頼区間は0.23〜0.60でした。

これは、片側性トレーニングによって
片側の力発揮能力が改善しやすいことを
支持する結果です。

② 両側の筋力

両側で発揮する筋力については、
両側性トレーニングが有利でした。

統合効果量はg = -0.28。
この研究では負の値が
両側性トレーニングに有利であることを示します。

つまり、スクワットのように
両脚で大きな力を発揮する能力を
高めたい場合には、
両脚でのトレーニングを行う合理性があります。

KEY CONCEPT

TRAINING SPECIFICITY

トレーニングの特異性

身体は与えられた刺激に適応します。
片側で力を発揮する練習と、
両側で力を発揮する練習では、
適応の現れ方が異なる場合があります。

ただし、片側で鍛えた能力が
両側の動作に全く転移しない、
という意味ではありません。

③ 筋肥大

筋肥大については、
片側性トレーニングと
両側性トレーニングの間に
統計的に明確な差は検出されませんでした。

統合効果量はg = 0.01、
95%信頼区間は-0.25〜0.26です。

この結果から、
筋肉を大きくするために
必ず片脚種目を選ぶ必要がある、
あるいは両脚種目が必ず優れている、
とは言えません。

ただし、筋肥大に関するエビデンスの確実性は
低いと評価されています。
種目や負荷設定などの条件によって
結果が変わる可能性は残ります。

03 / RESEARCH SUMMARY

結果を整理すると。

評価項目
研究結果
片側の筋力
片側性が有利
両側の筋力
両側性が有利
片側ジャンプ
片側性が有利
両側ジャンプ
明確な差なし
筋肥大
明確な差なし
スプリント
明確な差なし
方向転換
明確な差なし

出典:Xin et al., 2026。
「明確な差なし」は統計的有意差が検出されなかったことを示します。
完全な同等性を証明したものではありません。

片脚種目を行えば、
必ず走るのが速くなる?

片脚で身体を支える動作は、
ランニングや方向転換などの
スポーツ動作と共通する特徴があります。

しかし、動作に共通点があることと、
そのトレーニングが競技パフォーマンスを
必ず大きく改善することは同じではありません。

2026年のメタ解析では、
スプリントや方向転換能力について
両者の間に統計的に明確な差は
検出されませんでした。

競技パフォーマンスには、
筋力だけでなく、
技術、速度、タイミング、
競技特有の動作なども関係します。

04 / PROGRAM DESIGN

では、どちらを
選べばよいのか。

ここからは研究結果を踏まえた
実践上の考え方です。
特定の組み合わせが全員に最適であると
証明されたわけではありません。

GOAL 01

スクワットの最大筋力を伸ばしたい

バーベルスクワットなど、
両脚での力発揮を中心に練習する方法が考えられます。

GOAL 02

片脚での力発揮を高めたい

ステップアップや片脚スクワットなど、
片側性の種目を取り入れる方法があります。

GOAL 03

筋肥大を目指したい

片側性か両側性かだけでなく、
負荷、セット数、努力度、
動作範囲などを含めて考えます。

GOAL 04

身体の使い方を確認したい

両脚と片脚の両方を観察することで、
動作ごとの特徴を確認する方法があります。

05 / MOVEMENT ASSESSMENT

片脚で不安定だから、
筋力が弱いとは限らない。

片脚トレーニングでは、
両脚で行う種目とは異なる
姿勢や荷重の調整が求められる場合があります。

しかし、片脚スクワットで
身体がふらつくことだけから、
特定の筋肉が弱いと判断することはできません。

関節可動域、運動経験、
バランス能力、負荷設定、
動作の習熟度など、
複数の要素が関係する可能性があります。

01
RANGE

必要な関節可動域

02
STRENGTH

力を発揮する能力

03
CONTROL

荷重と身体の制御

04
SKILL

動作への習熟

例えば、片脚でのスクワットが
安定しない場合でも、
それが筋力の不足によるものなのか、
動作への慣れによるものなのか、
あるいは関節の動きが関係しているのかは、
一つの動作だけでは判断できません。

ASSESSMENT POINT

片脚トレーニングは、
筋力を高める手段であると同時に、
動作の特徴を観察する機会にもなります。
ただし、観察結果だけで原因を断定しないことが重要です。

06 / PRACTICAL EXAMPLE

両脚と片脚を、
組み合わせるという選択。

片側性と両側性のトレーニングは、
必ずどちらか一方だけを
選ばなければならないわけではありません。

例えば、下半身の筋力向上を目的とした
トレーニングでは、
両脚種目と片脚種目を
組み合わせる方法が考えられます。

STEP 01

スクワット系種目

両脚での力発揮と動作を練習する。

STEP 02

ステップアップ

片側を中心とした荷重と力発揮を練習する。

STEP 03

必要な補助種目

個別の目的や課題に応じて追加する。

※プログラムの構成例です。
種目数・セット数・負荷・実施順序は
目的や身体の状態によって調整します。

種目を選ぶときに確認したいこと

目的とする筋力や動作に合っているか。
必要な可動域で実施できるか。
目標とする負荷を安全に扱えるか。
トレーニング後の疲労が過度になっていないか。

片脚種目だから優れている、
両脚種目だから基本である、
と固定的に考える必要はありません。

SAFETY

痛みやめまいが生じる場合は運動を中止してください。
外傷後や医療上の運動制限がある場合には、
必要に応じて医療専門職へ相談してください。

07 / STUDIO KOMPAS

種目の正解より、
選ぶ理由を。

トレーニングには、
さまざまな方法があります。

しかし、一つの方法が
すべての人にとって
最適であるとは限りません。

STUDIO KOMPASでは、
その人の目的や運動経験、
現在の身体の状態、
ライフスタイルを踏まえて
トレーニングを考えます。

片脚か、両脚か。

重要なのは、
どちらが優れているかを
一律に決めることではなく、
なぜその種目を選ぶのかを
明確にすることです。

CHOOSE WITH
PURPOSE.

08 / FAQ

よくある質問

Q. 片脚トレーニングの方が筋肥大しますか?

現時点では、片側性トレーニングが
両側性トレーニングより
筋肥大に優れるという明確な根拠はありません。
ただし、研究の確実性には限界があります。

Q. スクワットとブルガリアンスクワットはどちらがよいですか?

両脚での最大筋力を高めたい場合は
スクワットを中心にする方法があります。
片側での力発揮を高めたい場合には
ブルガリアンスクワットなどが選択肢になります。
目的に応じて併用することも可能です。

Q. 片脚トレーニングはスポーツに効果がありますか?

片側の筋力やジャンプ能力の改善には
有利な傾向が示されています。
一方、スプリントや方向転換能力については、
両側性トレーニングとの明確な差が
検出されていない研究もあります。

Q. 初心者も片脚トレーニングを行うべきですか?

必ず行う必要はありません。
動作への習熟度や身体の状態に合わせて、
支持を利用した種目や軽い負荷から
始める方法があります。

Q. 片脚トレーニングで左右差は改善しますか?

片側ごとに負荷を調整する方法はありますが、
すべての左右差が改善するとは限りません。
左右差の種類や本人の目的を確認することが重要です。

REFERENCES

参考文献

  1. Xin X, Liu Q, Guo Y, et al.
    Comparative effects of unilateral versus bilateral
    training on performance adaptations:
    a systematic review and multilevel meta-analysis.
    BMC Sports Sci Med Rehabil. 2026.


    論文を確認する ↗

  2. Kassiano W, Nunes JP, Costa B, et al.
    Comparison of Muscle Growth and Dynamic Strength
    Adaptations Induced by Unilateral and Bilateral
    Resistance Training:
    A Systematic Review and Meta-analysis.
    Sports Med. 2025;55:923–936.


    論文を確認する ↗

本記事は研究から得られた一般的な知見と、
実践上のプログラム設計の考え方を区別しています。
個人の身体状態や運動目的に対する
特定の種目の効果を保証するものではありません。

AUTHOR / SUPERVISOR

山岸 慎

執筆・監修:山岸慎|STUDIO KOMPAS創業者・
パーソナルトレーナー|NSCA-CSCS

トレーニング科学や身体評価の知識をもとに、
運動の目的や身体の状態に合わせた
トレーニングについて解説しています。


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