TRAINING SCIENCE / RANGE OF MOTION
筋トレの可動域は、
広いほどいい?
フルレンジとパーシャル。
筋肥大に必要な動作範囲を考える。
スクワットは深くしゃがむ方がいい。
ベンチプレスは大きく動かす方がいい。
筋肉はできるだけ伸ばして鍛えた方がいい。
筋トレの可動域については、
さまざまな考え方があります。
一方で近年、
動作の一部分だけを使う
「パーシャルレップ」についても
研究が進んでいます。
では、筋肉を大きくするためには、
どこまで身体を動かすべきなのでしょうか。
この記事では、
フルレンジとパーシャルの違い、
筋肉の長さと筋肥大の関係、
そして2026年までに報告された研究をもとに、
トレーニングの可動域を整理します。
QUICK ANSWER
可動域は重要。
ただし、広ければ
必ずよいわけではない。
筋トレでは、
十分な可動域を使うことが
筋力向上や筋肥大に役立つ場合があります。
しかし、
すべての種目で最大限の可動域を使うことが、
必ず最も大きな筋肥大につながるとは限りません。
近年の研究では、
筋肉が伸ばされた位置を含む
パーシャルレップでも、
フルレンジに近い筋肥大効果が
得られる可能性が報告されています。
広い動作範囲
種目で設定した可動域を
広く使う方法。
筋力や筋肥大の研究で
有効性が確認されています。
部分的な動作範囲
可動域の一部分を使う方法。
どの位置で反復するかによって
筋肉への刺激が異なります。
目的に合わせる
筋肥大、筋力、動作習得、
身体の状態によって
適切な動作範囲を考えます。
RANGE OF MOTION
WITH PURPOSE.
大きく動かすこと自体を目的にせず、
何のために、どの範囲を使うのかを考える。
01 / DEFINITION
筋トレの
可動域とは?
可動域は英語で
Range of Motionと呼ばれ、
ROMと略されます。
関節が動く範囲を表す言葉ですが、
トレーニングでは、
実際の反復動作で
どの範囲を使用するかという意味でも
用いられます。
例えばスクワットの場合
膝や股関節をどこまで曲げるかによって、
スクワットの動作範囲は変わります。
浅いスクワットと深いスクワットでは、
関節角度、筋肉の長さ、
各関節に求められる力学的条件が異なります。
関節可動域と運動可動域は区別する
例えば、
股関節を単独で動かせる範囲と、
バーベルを担いだ状態で
スクワットできる範囲は、
必ずしも一致しません。
スクワットでは、
股関節だけでなく、
足関節、膝関節、体幹、
負荷の位置なども
動作に関係するためです。
関節が動く範囲と、
実際に使える範囲は
同じとは限らない。
トレーニングの可動域は、
関節の柔軟性だけでなく、
種目の構造や負荷条件によっても変化します。
02 / FULL VS PARTIAL
フルレンジと
パーシャルの違い。
FULL RANGE OF MOTION
フルレンジ
種目で設定された
広い動作範囲を使って
反復する方法です。
広い
複数の関節角度を使う
有効な基本選択肢
PARTIAL RANGE OF MOTION
パーシャル
動作範囲の一部分を
選択して反復する方法です。
限定的
特定の関節角度を使う
条件次第で有効
パーシャルにも種類がある
パーシャルレップは、
単に動作範囲が狭いというだけではありません。
筋肉が比較的伸ばされた位置を使う
Lengthened Partialsと、
筋肉が比較的短い位置を使う方法では、
同じパーシャルでも
トレーニング条件が異なります。
この違いは、
筋肥大に関する研究を理解するうえで
重要なポイントです。
03 / SCIENTIFIC EVIDENCE
研究では、
どちらが筋肥大に
有利なのか。
フルレンジとパーシャルを比較した研究は、
近年増えています。
ただし、
研究ごとに対象者、
使用種目、
パーシャルの動作範囲、
トレーニング期間が異なります。
そのため、
一つの研究結果を
すべての種目へ当てはめることはできません。
RESEARCH 01 / 2021
フルレンジを支持する
メタ解析
Pallarésらは、
16研究を対象とした
系統的レビュー・メタ解析を発表しました。
解析では、
フルレンジのトレーニングが
パーシャルと比較して、
筋力向上と下肢の筋肥大において
有利な結果を示しました。
ただし、
当時の研究では
筋肉が短い位置を使う
パーシャル条件が多く含まれていました。
したがって、
この結果だけで
すべてのパーシャルレップが
フルレンジより劣るとは判断できません。
RESEARCH 02 / 2023
差は必ずしも
大きくない。
Wolfらによる2023年の
系統的レビュー・メタ解析では、
フルレンジとパーシャルの
トレーニング効果が比較されました。
全体としては
フルレンジをわずかに支持する結果でしたが、
効果の差は小さいものでした。
また、
筋肉が伸ばされた位置を使う
パーシャルレップについては、
筋肥大に有利となる可能性も示されました。
ただし、
この部分の推定には不確実性があり、
パーシャルが優れていると
確定したわけではありません。
RESEARCH 03 / 2025
297名を対象とした
多施設研究
参加者
施設
週間
Gschneidnerらの研究では、
フルレンジと、
筋肉が伸ばされた位置を使う
パーシャルレップが比較されました。
上腕と大腿の筋断面積の変化について、
両条件の推定差は小さいものでした。
研究者らは、
実用上の差が小さい可能性を報告しています。
ただし、
事前に設定された厳格な同等性の判定基準では、
両条件の同等性が
統計的に確証されたわけではありません。
RESEARCH 04 / 2026
長い筋長での
パーシャルという選択肢。
McMahonらは2026年、
45名を対象として、
レッグエクステンションの
動作範囲を比較した研究を報告しました。
筋肉が伸ばされた位置を使う
パーシャル条件と、
フルレンジ条件では、
大腿外側広筋の筋厚変化に
明確な差が検出されませんでした。
一方、
筋肉が短い位置を中心に使う条件とは、
一部の測定部位で差が認められました。
ただし、
各条件で使用重量も異なっていたため、
動作範囲だけの効果として
解釈することはできません。
RESEARCH INTERPRETATION
現在の研究から、
一つの正解は決められない。
フルレンジは有効な基本選択肢です。
一方、筋肉が伸ばされた位置を含む
パーシャルレップも、
筋肥大に有効な方法となる可能性があります。
ただし、種目や筋群を問わず
一方が常に優れていると
言える段階ではありません。
04 / MUSCLE LENGTH
可動域だけでなく、
筋肉の長さを考える。
筋肉は、
関節の位置によって
長さが変化します。
例えば肘を曲げ伸ばしすると、
上腕二頭筋などの
筋肉の長さが変わります。
ただし、
関節を大きく動かしたからといって、
目的とする筋肉が
常に大きく伸ばされるとは限りません。
筋肉が複数の関節をまたぐ場合には、
それぞれの関節角度が
筋肉の長さに影響するためです。
01
関節の位置
関節角度によって
筋肉の長さや力学的条件が変わります。
02
筋肉の長さ
目的とする筋肉が
どの長さで力を発揮しているかを考えます。
03
外部負荷
同じ筋長でも、
重力やマシンの構造によって
必要な関節トルクは異なります。
ROM ≠
MUSCLE LENGTH.
関節の可動域と筋肉の長さは、
関連していても同じ概念ではありません。
05 / PRACTICAL APPLICATION
種目によって、
可動域の意味は変わる。
EXERCISE 01
SQUAT
スクワット
深くしゃがむほど、
股関節・膝関節・足関節に
求められる動きが変化します。
ただし、
深さだけでフォームの良し悪しを
判断することはできません。
使用重量、目的、
関節の状態、
動作中のコントロールを
合わせて考えます。
EXERCISE 02
BENCH PRESS
ベンチプレス
バーベルを下ろす位置によって、
肩関節や肘関節の角度が変わります。
胸まで下ろすことを
すべての人に共通する条件とせず、
目的とする動作や
肩関節の状態を確認します。
可動域を変える場合には、
使用重量や反復回数も
合わせて調整する必要があります。
EXERCISE 03
ARM CURL
アームカール
肘をどこまで曲げ伸ばしするかで、
上腕の筋肉が働く条件は変化します。
また、
肩関節の位置によっても
上腕二頭筋の長さは変わります。
そのため、
肘関節の可動域だけでは
筋肉への刺激を完全には説明できません。
EXERCISE 04
LEG EXTENSION
レッグエクステンション
膝関節の角度によって、
大腿四頭筋の長さや
負荷条件が変化します。
近年の研究では、
膝を曲げた位置を含む
パーシャルレップが検討されています。
ただし、
研究で使用された角度や重量を
そのまま全員に適用するものではありません。
06 / DECISION PROCESS
可動域を決めるとき、
何を確認する?
トレーニングの可動域は、
できるだけ広くすることだけを
目標にする必要はありません。
実際のプログラムでは、
次のような項目を確認しながら
動作範囲を考えます。
トレーニングの目的は何か。
筋肥大、筋力、競技動作、
動作習得などを整理する。
現在どの範囲まで
無理なく関節を動かせるか。
目的とする動作を
安定してコントロールできるか。
可動域を変えたときに、
重量・回数・努力度が
どのように変化するか。
痛みや違和感がないか。
必要に応じて負荷や種目を調整する。
PRACTICAL POINT
可動域を変えるなら、
重量も見直す。
動作範囲を広げたり狭めたりすると、
同じ重量でも
トレーニングの難易度が変化します。
可動域だけを変更して
以前と同じ重量を維持する必要はありません。
07 / STUDIO KOMPAS
一つのフォームを、
全員の正解にしない。
STUDIO KOMPASでは、
トレーニングを組み立てる際に、
目的や運動経験、
現在の身体の状態を確認します。
姿勢や関節の動き、
実際のトレーニング動作も、
身体を理解するための情報になります。
例えばスクワットでも、
すべての人が
同じ深さ、同じ重量、
同じフォームで行う必要はありません。
大切なのは、
その人が何を目的としていて、
現在どのような動作ができるのかを
確認することです。
そのうえで、
必要なトレーニングを考えます。
PURPOSE
目的
BODY
現在の身体
MOVEMENT
実際の動作
TRAINING
必要な運動
08 / FAQ
よくある質問。
Q. 筋肥大にはフルレンジが最適ですか?
フルレンジは有効な方法ですが、
すべての種目で最適と
確定しているわけではありません。
筋肉が伸ばされた位置を含む
パーシャルレップでも、
近い筋肥大効果が得られる可能性があります。
Q. パーシャルレップでは筋肉がつきませんか?
そのようなことはありません。
パーシャルレップでも
筋肥大は起こります。
ただし、
使用する動作範囲や
負荷条件によって結果が変わる可能性があります。
Q. スクワットは深いほどよいですか?
深いスクワットには
特有のトレーニング効果がありますが、
すべての人が同じ深さを
目指す必要はありません。
目的、関節の状態、
使用重量などを踏まえて判断します。
Q. 可動域が狭い場合はどうすればよいですか?
まずはどの動作で、
どのような制限があるかを確認します。
必要に応じて、
負荷、動作範囲、
種目、準備運動などを調整します。
痛みがある場合には
無理に動作範囲を広げないことが重要です。
CONCLUSION
大切なのは、
どこまで動かすかの
理由を持つこと。
フルレンジとパーシャルは、
どちらか一方だけが
正しいトレーニング方法ではありません。
筋肉がどの長さで力を発揮するのか。
どの関節角度で負荷が大きくなるのか。
何を目的としてトレーニングするのか。
こうした条件を整理することで、
可動域はより意味のある
トレーニング変数になります。
動作を大きくすることそのものではなく、
目的に合った動作範囲を選ぶことが重要です。
SCIENTIFIC REFERENCES
参考文献。
-
Pallarés JG, et al. (2021).
Effects of range of motion on resistance
training adaptations:
A systematic review and meta-analysis.
Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports.
DOIで確認する ↗
-
Wolf M, et al. (2023).
Partial Vs Full Range of Motion Resistance Training:
A Systematic Review and Meta-Analysis.
International Journal of Strength and Conditioning.
DOIで確認する ↗
-
Varovic D, et al. (2025).
Does Muscle Length Influence Regional Hypertrophy?
A Systematic Review and Meta-Analysis.
International Journal of Sports Medicine.
DOIで確認する ↗
-
Gschneidner D, et al. (2025).
The effects of lengthened-partial range of motion
resistance training of the limbs on arm and thigh
muscle area: A multi-site randomised trial.
Journal of Sports Sciences.
DOIで確認する ↗
-
McMahon G, et al. (2026).
Moderate Intensity Resistance Training With Partial
Range-of-Motion at Long Muscle Lengths Elicits
Similar Hypertrophy and Architectural Adaptations
as High Intensity Resistance Training Using
Full Range-of-Motion.
Journal of Strength and Conditioning Research.
DOIで確認する ↗
EDITORIAL NOTE
本記事では、
研究で報告された一般的な知見と、
STUDIO KOMPASにおける
トレーニングの考え方を区別しています。
研究結果は集団としての傾向を示すものであり、
すべての人に共通する
最適な動作範囲を示すものではありません。
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