TRAINING SCIENCE / REPETITION TEMPO

筋トレは、
ゆっくり動かす方が
効果的?

動作の速さと、
筋肉が成長することは同じではない。

筋トレでは、
「ゆっくり動かした方が筋肉に効く」
と説明されることがあります。

ダンベルをゆっくり下ろす。
スクワットで時間をかけてしゃがむ。
反動を使わず、丁寧に動かす。

こうした方法には意味があります。
しかし、動作を遅くすればするほど
筋肥大の効果が高まるのでしょうか。

反対に、速く動かすトレーニングでは
筋肉が成長しにくいのでしょうか。

この記事では、
2025年の系統的レビュー・メタ解析を中心に、
筋トレの動作速度と筋肥大の関係を整理します。

TRAINING TEMPO
HYPERTROPHY
ECCENTRIC
MOVEMENT CONTROL

QUICK ANSWER

ゆっくり動かせば、
必ず筋肉が大きくなる
わけではない。

筋肥大を目的とする場合、
動作テンポは調整できる要素の一つです。

しかし研究では、
比較的速いテンポと遅いテンポの間で、
筋肥大の効果に大きな違いが
確認されない場合があります。

一方で、
動作速度を変えることで、
扱える重量や反復回数、
動作のコントロールは変化します。

01 / MUSCLE GROWTH
筋肥大

動作速度だけで
効果が決まるわけではない。

02 / STRENGTH
筋力

重量やトレーニング目的と
合わせて考える。

03 / CONTROL
動作の質

速さよりも、
必要な動きをコントロールできるか。


SPEED IS
NOT THE GOAL.

速く動かすことも、遅く動かすことも、
それ自体を目的にしない。

01 / DEFINITION

筋トレのテンポとは、
何を指すのか。

筋トレにおけるテンポとは、
1回の反復動作を
どのような時間配分で行うかを
表すものです。

例えばスクワットでは、
身体を下ろす局面と、
身体を持ち上げる局面があります。

この2つの局面では、
筋肉の働き方が異なります。

コンセントリック収縮

筋肉が短くなりながら
力を発揮する収縮です。

スクワットでは、
しゃがんだ位置から
立ち上がる局面が代表例です。

エキセントリック収縮

筋肉が伸ばされながら
力を発揮する収縮です。

スクワットで身体を下ろす局面や、
アームカールでダンベルを下ろす局面などが
該当します。

KEY POINT

「1回を何秒で行うか」と、
「どの局面を何秒で行うか」は違う。

例えば1回4秒の動作でも、
下ろす局面に3秒を使う場合と、
持ち上げる局面に3秒を使う場合では、
動作の条件が異なります。

研究結果を読むときにも、
何の速度を比較しているのかを
確認する必要があります。

02 / RESEARCH EVIDENCE

2025年の研究では、
何が分かった?

Enesらは2025年、
レジスタンストレーニングの
動作テンポと筋肥大の関係について、
系統的レビュー・メタ解析を発表しました。

この研究では、
他のトレーニング条件を可能な範囲で揃え、
動作テンポの違いを比較した
14研究が解析されています。

RESEARCH / 2025

How Slow Should You Go?

Journal of Strength and Conditioning Research

14
対象研究数
FAST
速いテンポ条件
SLOW
遅いテンポ条件

解析全体では、
速いテンポと遅いテンポの
筋肥大効果の差は小さく、
動作テンポの影響は
全体として限定的と結論づけられています。

比較されたテンポの範囲

この研究では、
比較的速い条件として
約0.3〜2秒、
遅い条件として
約1.7〜4.5秒の
反復時間が扱われています。

ただし、対象研究には
持ち上げる局面の速度を変えたものと、
下ろす局面の速度を変えたものが含まれます。

したがって、
「すべての種目は何秒で動かすのが正解」
と決められた研究ではありません。

2015年のメタ解析では?

Schoenfeldらの2015年のメタ解析でも、
1回あたり約0.5〜8秒という
比較的広い反復時間の範囲で、
筋肥大の結果はおおむね類似していました。

一方、1回10秒を超えるような
極端に遅い反復は、
筋肥大に不利となる可能性が示唆されています。

ただし、
極端に遅い条件については
研究が限られており、
明確な境界値が確立されたわけではありません。

RESEARCH INTERPRETATION

「ゆっくりの方が必ず効く」
とは言えない。

現時点の研究からは、
筋肥大のために
すべての反復を意図的に遅くする必要があるとは
判断できません。

ただし、
動作速度だけでなく、
負荷、努力度、可動域、運動量なども
合わせて考える必要があります。

03 / SLOW VS FAST

ゆっくり動かす。
速く動かす。
何が違う?

SLOW TEMPO

ゆっくり動かす

動作に時間をかけることで、
関節の位置や
身体の動きを確認しやすくなる場合があります。

主な使いどころ
動作の確認・練習
注意点
極端に遅くする必要はない

FASTER TEMPO

比較的速く動かす

速い動作や素早い力の発揮が
求められる運動では、
速度そのものが
トレーニングの条件になります。

主な使いどころ
筋力・パワーの発揮
注意点
反動や制御不能とは区別する

ここで重要なのは、
「速く動かすこと」と
「雑に動かすこと」は
同じではないという点です。

また、
「ゆっくり動かすこと」と
「適切なフォームで動かすこと」も
必ずしも同じではありません。

運動の目的に対して、
必要な動作を
コントロールできているか。

速度は、その判断材料の一つです。

04 / ECCENTRIC ACTION

下ろす動作は、
ゆっくり行うべき?

筋トレでは、
重りを持ち上げる局面だけでなく、
下ろす局面も重要です。

例えばベンチプレスでは、
バーベルを胸の方向へ下ろす局面で、
主に働く筋群が
エキセントリック収縮を行います。

このとき、
重りをただ落下させるのではなく、
意図した軌道で下ろすことが
必要になる場合があります。

しかし、
だからといって
必ず5秒、6秒と時間をかける必要が
あるわけではありません。

01
CONTROL

動作をコントロールする

重りを意図した範囲と軌道で動かせるかを確認する。

02
LOAD

負荷との関係を見る

速度を変えたことで、
重量や反復回数がどう変わるかを確認する。

03
PURPOSE

目的に合わせて調整する

筋肥大、筋力、動作練習など、
何を目的とするかでテンポを選ぶ。

IMPORTANT

下ろす時間を長くすることが、
必ず筋肥大の効果を高めると
証明されているわけではありません。
動作の制御と、筋肥大の効果は
区別して考える必要があります。

05 / TRAINING GOALS

何を高めたいかで、
テンポの意味は変わる。

GOAL 01

筋肥大

筋肉量を増やすことが目的なら、
動作テンポだけでなく、
負荷、セット数、努力度、
継続的なトレーニングを
合わせて考えます。

比較的速いテンポでも、
遅いテンポでも、
筋肥大が起こる可能性があります。

GOAL 02

最大筋力

最大筋力の向上では、
適切な重量を扱うことや、
目的とする動作を反復することが
重要になります。

2017年のメタ解析では、
速い動作と比較的遅い動作の
両方で最大筋力の向上が確認されています。

GOAL 03

動作学習

新しい動作を習得する場合は、
速度を調整することで、
身体の位置や運動の順序を
確認しやすくなることがあります。

ただし、
ゆっくり練習することだけで、
速い動作の習得まで完結するとは限りません。

KEY POINT

同じスクワットでも、
目的が違えば方法も変わる。

筋肉量を増やしたいのか。
重い重量を挙げたいのか。
しゃがむ動作を習得したいのか。

目的が違えば、
動作速度を含むトレーニング条件も
変わる可能性があります。

06 / PRACTICAL APPLICATION

実際の筋トレでは、
テンポをどう決める?

ここからは、
研究結果を踏まえた
実践的な考え方を紹介します。

以下は、
すべての人に共通する
最適な秒数を示すものではありません。

01

まず、その種目を行う目的を決める。

02

必要な可動域と動作をコントロールできるか確認する。

03

重量と反復回数が目的に合っているか確認する。

04

速度を変えたことでフォームや努力度がどう変わるかを見る。

05

トレーニングの記録と身体の反応から調整する。

例えば、ベンチプレスの場合

バーベルを下ろす際に、
意図した位置へコントロールして
下ろせているかを確認します。

持ち上げる際には、
重量や目的に応じて、
必要な力を発揮できているかを見ます。

そのうえで、
テンポを変えることで
反復回数や動作がどう変わるかを
比較することができます。

秒数を決めた方がよい?

一定のテンポを設定することは、
動作条件を揃えるための方法として
役立つ場合があります。

ただし、
「下ろすときは必ず3秒」
「上げるときは必ず1秒」
という共通の正解が
確立されているわけではありません。

07 / COMMON MISUNDERSTANDINGS

テンポについて、
誤解しやすいこと。

ゆっくり動かすと筋肉に効く感覚が強いのはなぜ?

動作時間が長くなることで、
筋肉の疲労感や主観的なきつさが
変わる場合があります。
ただし、効いている感覚の強さが
長期的な筋肥大の大きさを
直接示すわけではありません。

速く動かすと反動を使うことになりませんか?

必ずしもそうではありません。
意図して速く力を発揮することと、
コントロールを失って
反動に頼ることは区別する必要があります。

ネガティブ動作は必ず3秒以上必要ですか?

一律の秒数は確立されていません。
目的や種目、負荷によって
適切な時間配分を考えます。

動作を遅くすればフォームは良くなりますか?

動作を確認しやすくなる場合はありますが、
遅くするだけで適切なフォームが
身につくとは限りません。
関節の動きや負荷の扱い方も
合わせて確認する必要があります。

08 / STUDIO KOMPAS

テンポを決める前に、
身体と目的を見る。

STUDIO KOMPASでは、
すべての人に同じ動作速度を
当てはめるのではなく、
目的や現在の身体の状態から
トレーニングを考えます。

筋肉量を増やしたいのか。
筋力を高めたいのか。
動作を習得したいのか。
スポーツのパフォーマンスを高めたいのか。

目的によって、
必要な負荷や反復回数、
動作速度は変わり得ます。

また、
同じ動作でも
関節の可動域や筋力、
運動経験によって
コントロールできる条件は異なります。

そのため、
「ゆっくり動かせば正しい」
「速く動かせば効果的」
と一つの方法に決める必要はありません。


MOVE WITH
PURPOSE.

どのように動くかは、
何のために動くかから考える。

01
目的
何を高めたいか
02
身体
現在どのように動けるか
03
負荷
どの条件で運動するか
04
調整
反応を見て更新する

FAQ

よくある質問。

筋トレはゆっくり行う方が筋肥大しますか?

必ずしもそうではありません。
2025年のメタ解析では、
比較的速いテンポと遅いテンポの間で、
筋肥大効果の差は全体として小さいと
報告されています。

筋トレは1回何秒が最適ですか?

すべての種目と目的に共通する
最適な秒数は確立されていません。
負荷、努力度、可動域、
動作の目的を合わせて考えます。

ダンベルを下ろすときは遅い方がよいですか?

動作をコントロールして下ろすことは重要ですが、
必ず長い時間をかける必要があるとは限りません。
種目や重量、目的に応じて調整します。

筋力を高めたい場合は速く動かすべきですか?

速い動作と比較的遅い動作の
両方で筋力向上は起こり得ます。
目的とする力の発揮方法や
使用重量によって、
速度を使い分けることがあります。

SCIENTIFIC REFERENCES

参考文献。


  1. Enes A, et al. (2025)

    How Slow Should You Go?
    A Systematic Review With Meta-Analysis
    of the Effect of Resistance Training
    Repetition Tempo on Muscle Hypertrophy.

    Journal of Strength and Conditioning Research.
    39(12):1331–1339.

    DOI: 10.1519/JSC.0000000000005302


    PubMedで確認する ↗

  2. Schoenfeld BJ, Ogborn DI, Krieger JW. (2015)

    Effect of repetition duration during resistance
    training on muscle hypertrophy:
    a systematic review and meta-analysis.

    Sports Medicine. 45(4):577–585.

    DOI: 10.1007/s40279-015-0304-0


    PubMedで確認する ↗

  3. Davies TB, et al. (2017)

    Effect of Movement Velocity During Resistance
    Training on Dynamic Muscular Strength:
    A Systematic Review and Meta-Analysis.

    Sports Medicine. 47(8):1603–1617.

    DOI: 10.1007/s40279-017-0676-4


    PubMedで確認する ↗
研究の解釈について

本記事では、
研究で報告された一般的な知見と、
STUDIO KOMPASにおける
トレーニングの考え方を区別しています。

研究で比較されたテンポの範囲や対象者は限られています。
すべての種目・年齢・運動経験に対して
同じ結果を保証するものではありません。

AUTHOR / SUPERVISOR

執筆・監修:山岸 慎

STUDIO KOMPAS創業者・パーソナルトレーナー|NSCA-CSCS

STUDIO KOMPASにて、
運動初心者からトレーニング経験者まで、
目的や身体の状態に合わせた
パーソナルトレーニングを行っています。


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