TRAINING SCIENCE / EXERCISE SELECTION
同じ脚でも、
同じようには
鍛えられない。
レッグプレスとレッグエクステンション。
筋肥大の違いを研究から考える。
脚の筋肉を鍛える代表的な種目に、
レッグプレスとレッグエクステンションがあります。
どちらも大腿四頭筋を鍛える種目ですが、
実際に筋肉が大きくなる場所まで
同じなのでしょうか。
2026年、日本の研究者らによって
両種目の筋肥大効果を直接比較した
研究が発表されました。
この記事では、
単関節種目と多関節種目の違い、
大腿四頭筋の解剖学的特徴、
そして研究結果をもとに、
種目選択の考え方を整理します。
QUICK ANSWER
大腿四頭筋でも、
筋肉ごとに結果は異なる。
2026年の研究では、
レッグエクステンションと
レッグプレスの両方で、
大腿四頭筋の筋肥大が確認されました。
しかし、大腿四頭筋を構成する
大腿直筋と広筋群では、
結果が異なっていました。
大腿直筋
レッグエクステンションの方が
大きな筋体積増加を示した。
広筋群
両種目とも筋肥大し、
条件間に明確な差は検出されなかった。
大臀筋
この研究では、
レッグプレス側で有意な筋体積増加が確認された。
※特定の研究条件で得られた結果です。
すべての人やトレーニング条件で
同じ変化が生じることを保証するものではありません。
01 / EXERCISE CLASSIFICATION
単関節種目と
多関節種目の違い。
トレーニング種目は、
動作に関わる関節の数によって、
単関節種目と多関節種目に分類されます。
これは、筋肉が一つだけ働くか、
複数働くかという分類ではありません。
SINGLE-JOINT
レッグエクステンション
単関節種目
- 主な関節運動
- 膝関節の伸展
- 主な対象筋
- 大腿四頭筋
- 特徴
-
膝を伸ばす動作を中心に、
大腿四頭筋へ負荷を与える。
MULTI-JOINT
レッグプレス
多関節種目
- 主な関節運動
- 股関節・膝関節の伸展
- 主な対象筋
- 大腿四頭筋・大臀筋など
- 特徴
-
複数の関節を動かし、
下半身の複数の筋群へ負荷を与える。
単関節種目だから特定の筋肉だけが働く、
多関節種目だからすべての筋肉を
同じように鍛えられる、
という意味ではありません。
02 / FUNCTIONAL ANATOMY
大腿四頭筋は、
一つの筋肉ではない。
大腿四頭筋は、
大腿直筋、外側広筋、内側広筋、
中間広筋の4つから構成されます。
これらはいずれも
膝関節の伸展に関わりますが、
解剖学的な特徴は同じではありません。
大腿四頭筋
股関節と膝関節をまたぐ二関節筋。
膝関節伸展に加えて、
股関節屈曲にも関与する。
主に膝関節伸展に関わる単関節筋。
主に膝関節伸展に関わる単関節筋。
大腿直筋の深部に位置し、
膝関節伸展に関わる単関節筋。
大腿直筋だけが、
股関節もまたいでいる。
大腿直筋は骨盤から始まり、
股関節と膝関節をまたいでいます。
そのため、
股関節と膝関節の角度によって、
筋肉の長さや力学的条件が変わります。
一方、広筋群は股関節をまたがず、
主に膝関節の伸展に関わります。
この解剖学的な違いは、
種目によって筋肉への刺激が
異なる理由を考えるうえで重要です。
同じ大腿四頭筋という筋群でも、
すべての構成筋が
同じ関節運動に関わるわけではありません。
ただし、解剖学的な特徴だけから
筋肥大の大きさを正確に予測することはできません。
03 / SCIENTIFIC EVIDENCE
2026年の研究では、
何が分かったのか。
Kinoshitaらは、
レッグエクステンションとレッグプレスによる
筋肥大の違いを直接比較しました。
MEDICINE & SCIENCE IN SPORTS & EXERCISE / 2026
単関節と多関節の
筋肥大効果を直接比較
参加者
週間
評価した筋肉
トレーニング未経験の成人17名が参加し、
片脚ではレッグエクステンション、
反対脚ではレッグプレスを実施しました。
週2回、1回5セット、
1セット10回、
70%1RMを基準とした条件で
12週間トレーニングを行いました。
研究ではMRIを用いて、
大腿四頭筋を含む17の筋肉の体積を
トレーニング前後で測定しました。
この研究の重要な特徴
同じ参加者の左右の脚を使って、
異なる種目を比較していることです。
つまり、この研究は
「片脚と両脚のトレーニング比較」ではありません。
両条件とも片脚で実施し、
主に種目の違いを比較しています。
同じ人の左右を比較することで、
個人間の体格や生活習慣などの違いによる
影響を減らせる利点があります。
04 / RESEARCH RESULTS
大腿直筋では、
大きな違いが見られた。
大腿直筋の筋体積変化
LEG EXTENSION
レッグエクステンション
LEG PRESS
レッグプレス
出典:Kinoshita et al., 2026。
大腿直筋の筋体積変化率。
条件間の差は統計的に有意でした。
バーは数値の概略比較です。
レッグエクステンションで
大腿直筋の増加が大きかった
大腿直筋の筋体積は、
レッグエクステンション側で
平均13.2%増加しました。
一方、レッグプレス側では
平均1.1%の変化で、
トレーニング前後の統計的に有意な
増加は確認されませんでした。
両条件の変化には、
統計的に有意な差が認められました。
広筋群ではどうだったのか
外側広筋、内側広筋、中間広筋では、
両種目とも筋体積が増加しました。
広筋群の増加率は、
レッグエクステンションで5.0〜7.2%、
レッグプレスで4.4〜6.2%でした。
これらの筋肉や大腿四頭筋全体については、
両条件の間に統計的に明確な差は
検出されませんでした。
KEY FINDING
筋群全体の結果と、
個別の筋肉の結果は違う。
大腿四頭筋全体の筋肥大だけを見ると、
両種目の違いは小さく見えます。
しかし、構成する筋肉を個別に評価すると、
大腿直筋では異なる結果が確認されました。
トレーニングの効果を考える際には、
「どの筋群か」だけでなく、
「その中のどの筋肉か」という視点も重要です。
05 / MUSCLE-SPECIFIC ADAPTATION
レッグプレスには、
別の特徴がある。
レッグエクステンションで
大腿直筋の筋肥大が大きかった一方、
レッグプレスでは
別の筋肉に変化が見られました。
+15.4%
大臀筋
+6.2%
大内転筋
この研究では、
レッグプレス側で
大臀筋と大内転筋の
有意な筋体積増加が確認されました。
レッグエクステンション側では、
これらの筋肉に
有意な増加は認められませんでした。
なぜ違いが生まれるのか
レッグプレスでは、
膝関節の伸展だけでなく、
股関節の伸展も行われます。
そのため、
大腿四頭筋に加えて、
股関節伸展に関わる筋群にも
負荷がかかります。
ただし、
どの筋肉にどの程度の刺激が加わるかは、
姿勢、関節角度、負荷、
動作範囲などによっても変わります。
レッグプレスは複数の筋群を鍛えられる種目ですが、
下半身のすべての筋肉を
同じ程度に発達させるわけではありません。
06 / INTERPRETING THE EVIDENCE
この研究だけで、
結論を決めてよいのか。
2026年の研究は、
種目選択を考えるうえで
興味深い結果を示しています。
しかし、一つの研究から
すべてのトレーニング条件に
共通する結論を導くことはできません。
2023年のメタ解析では
Rosaらによる2023年の
系統的レビュー・メタ解析では、
単関節種目と多関節種目による
四肢の筋肥大効果が比較されました。
7件の研究が含まれ、
筋肉全体の肥大については、
両方法の間に大きな違いがあるという
結果は得られませんでした。
一方、特定の筋肉や筋内の部位を
重点的に発達させるうえでは、
単関節種目を追加することに
意味がある可能性も指摘されています。
2026年の別の研究では
Monteらは、
スクワットとレッグエクステンションによる
神経筋の適応を比較しました。
24名を対象とした10週間の研究では、
両群とも筋厚や筋力の改善が確認され、
一部の指標ではスクワット群の
改善が大きくなりました。
ただし、この研究は
レッグプレスではなくスクワットを比較しており、
評価した筋肉や測定方法も異なります。
そのため、研究結果を直接並べて
どちらが優れていると判断することはできません。
研究結果は対象者、使用種目、負荷設定、
トレーニング期間、測定部位によって変わり得ます。
「差が検出されなかった」ことも、
完全に同じ効果があると証明されたことを
意味しません。
07 / PRACTICAL APPLICATION
目的に合わせて、
種目を選ぶ。
ここからは研究結果を踏まえた
実践上の考え方です。
以下の組み合わせ自体の優位性が
直接証明されたわけではありません。
下半身の複数の筋群を鍛えたい
レッグプレスやスクワットなど、
複数の関節を動かす種目が選択肢になります。
大腿直筋を重点的に鍛えたい
レッグエクステンションなど、
膝関節伸展を中心とした種目を
取り入れる方法があります。
限られた時間でトレーニングしたい
多関節種目を中心に構成し、
必要な筋肉に対して
補助種目を追加する方法が考えられます。
特定の動作能力を高めたい
目的とする動作に必要な
筋力、関節運動、技術を整理して
種目を選択します。
多関節種目だけでは不十分?
必ずしもそうではありません。
多関節種目だけでも、
筋力や筋量の改善は期待できます。
一方で、
特定の筋肉を重点的に発達させたい場合や、
目的とする動作に必要な能力を補いたい場合には、
単関節種目を追加する選択肢があります。
単関節種目は補助種目にすぎない?
単関節種目を必ず補助的な位置づけにする
必要もありません。
目的によっては、
特定の筋肉への負荷を優先して
プログラムを組み立てることも考えられます。
重要なのは、
多関節種目か単関節種目かという分類よりも、
その種目を選ぶ目的が明確であることです。
08 / PROGRAM DESIGN
組み合わせるなら、
何を考える?
例えば、下半身の筋肥大を目的とした
トレーニングを考えます。
多関節種目で複数の筋群に負荷を与え、
必要に応じて単関節種目を追加する方法があります。
多関節種目
スクワットやレッグプレスなど。
複数の関節運動を使って
下半身に負荷を与える。
単関節種目
レッグエクステンションなど。
目的に応じて
膝関節伸展筋群への負荷を追加する。
その他の必要な種目
ハムストリングスや下腿など、
目的に応じて別の筋群も検討する。
※一般的な構成例です。
種目の順番、セット数、重量、頻度は
運動経験や身体の状態に応じて調整します。
実際のプログラムでは
どの筋肉を発達させたいのか。
どの動作の能力を高めたいのか。
その種目を必要な可動域で実施できるか。
どの程度の負荷と運動量が適切か。
こうした条件を整理したうえで、
種目を組み合わせることが重要です。
膝や股関節に痛みがある場合、
手術後や医療上の運動制限がある場合は、
自己判断で高負荷の運動を行わず、
必要に応じて医療専門職へ相談してください。
STUDIO KOMPAS / TRAINING PHILOSOPHY
何をするか。
その前に、
なぜするか。
トレーニングには、
さまざまな種目があります。
同じ筋肉を鍛える種目でも、
関節の動きや負荷のかかり方は異なります。
STUDIO KOMPASでは、
種目を一律に決めるのではなく、
その人の目的や運動経験、
身体の状態を踏まえて
トレーニングを考えます。
大切なのは、
有名な種目を行うことでも、
難しい種目を選ぶことでもありません。
今の自分にとって、
その種目を行う理由があるか。
トレーニングを選ぶ際には、
その視点を大切にしています。
EXERCISE
WITH PURPOSE.
09 / FAQ
よくある質問
Q. レッグプレスとレッグエクステンションはどちらが筋肥大に効果的ですか?
どの筋肉を対象とするかによって
結果が異なります。
2026年の研究では、
大腿直筋はレッグエクステンション、
大臀筋や大内転筋はレッグプレスで
大きな筋体積増加が確認されました。
Q. レッグプレスだけで大腿四頭筋を鍛えられますか?
レッグプレスでも大腿四頭筋を鍛えられます。
ただし、大腿直筋を重点的に発達させたい場合には、
レッグエクステンションなどを
追加する選択肢があります。
Q. 多関節種目の方が効率的ですか?
複数の筋群に同時に負荷を与えられる点は
多関節種目の特徴です。
ただし、特定の筋肉を重点的に鍛えたい場合は、
単関節種目が適していることもあります。
Q. スクワットでも大腿直筋は鍛えられますか?
スクワットにも大腿直筋は関与します。
ただし、関与することと、
大きな筋肥大が生じることは同じではありません。
大腿直筋への刺激を重視する場合は、
種目の組み合わせを検討する方法があります。
Q. 初心者はどちらから始めるべきですか?
一律に決める必要はありません。
運動経験、身体の状態、
目的、使用できる設備などに応じて
選択することが重要です。
SCIENTIFIC REFERENCES
参考文献
-
Kinoshita M, Maeo S, Kobayashi Y, et al.
Hypertrophic Effects of Single- versus
Multi-Joint Exercise:
A Direct Comparison between Knee Extension
and Leg Press.
Med Sci Sports Exerc.
2026;58(7):1566-1580. -
Rosa A, Vazquez G, Grgic J, et al.
Hypertrophic Effects of Single-
Versus Multi-Joint Exercise of the Limb Muscles:
A Systematic Review and Meta-analysis.
Strength Cond J.
2023;45(1):49-57. -
Monte A, Baltzopoulos V, Zamparo P, et al.
Differential neuromuscular adaptations
following multi-joint vs single-joint
resistance exercise training.
Eur J Appl Physiol.
2026.
本記事は、2026年10月24日時点で確認できる
研究情報をもとに構成しています。
研究で確認された結果と、
実践上のトレーニング選択の考え方を
区別して記載しています。
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