THORACIC ROTATION / MOBILITY
身体をひねる。
その動きは、
どこから生まれる?
胸椎回旋を、
「硬い・柔らかい」だけで考えない。
振り向く。腕を伸ばす。歩く。
スポーツで身体をひねる。
私たちは日常生活やトレーニングの中で、
身体をさまざまな方向へ回旋させています。
そのとき重要になる部位の一つが
胸椎です。
ただし、身体をひねる動きを見て
「胸椎が硬い」とすぐに決めることはできません。
胸椎だけでなく、
骨盤・腰椎・股関節なども動作に関わるためです。
この記事では、
胸椎回旋の基本から評価、
トレーニングまでを整理します。
QUICK ANSWER
胸椎は、
回旋する。
胸椎は、頸椎と腰椎の間にある
12個の椎骨から構成されています。
屈曲・伸展・側屈だけではなく、
軸を中心とした回旋運動も行います。
ただし実際に身体をひねるときは、
胸椎だけが単独で動いているわけではありません。
骨盤や腰椎、股関節なども関与しながら、
身体全体として回旋動作がつくられます。
ROTATION IS
A WHOLE-BODY MOVEMENT.
胸椎を見る。
でも、胸椎だけで身体を決めない。
01 / THORACIC SPINE
胸椎とは?
頸椎と腰椎の間にある、
胸郭を構成する脊柱です。
脊柱は大きく、
頸椎・胸椎・腰椎などに分けられます。
胸椎はT1〜T12の12椎から構成され、
肋骨とともに胸郭を形成します。
胸椎では、
前後へ曲がる屈曲・伸展、
横へ倒れる側屈、
身体をひねる回旋などが生じます。
トレーニングでは
「胸椎モビリティ」という言葉が
よく使われますが、
モビリティは単に柔らかいことだけを意味しません。
必要な動作の中で、
その運動範囲をどのように使えるかまで
確認する必要があります。
屈曲
身体を前方へ丸める方向。
伸展
身体を後方へ起こす方向。
側屈
身体を横方向へ倒す動き。
回旋
身体を左右へひねる動き。
02 / ROTATION
身体をひねるとき、
胸椎だけが回っているわけではない。
「体幹回旋」という言葉から、
胸椎だけが回っているように
イメージすることがあります。
しかし実際の立位回旋では、
胸椎・腰椎・骨盤などが
それぞれ異なる割合で運動へ参加します。
2018年に報告された立位での研究では、
胸椎、腰椎、骨盤がそれぞれ異なる回旋量を示し、
身体全体の回旋をつくっていました。
この研究では平均として
胸椎の回旋量が腰椎より大きく観察されていますが、
個人差も存在します。
そのため、
「身体をひねりにくい=胸椎だけが原因」
と判断することはできません。
+
LUMBAR
+
PELVIS
+
HIP
身体の回旋は複数の部位から構成されます。
胸椎は重要な一部ですが、
回旋動作全体と同じものではありません。
03 / RANGE OF MOTION
胸椎は、
何度回ればいい?
胸椎回旋について調べると、
「○度あれば正常」
という数字を見ることがあります。
しかし可動域の数値は、
測定姿勢や測定方法によって変化します。
例えば2018年の研究では、
立位で胸椎の軸回旋を測定したところ、
平均で左33.5°、右37.1°でした。
一方、座位や四つ這い、
腰椎の動きを抑えた姿勢など、
条件が変われば測定値も変わります。
したがってKOMPASでは、
一つの数字だけを基準に
「正常/異常」と判断することはしません。
可動域の数値は、
「測定条件」とセットで考える。
04 / POSITION
姿勢が変わると、
回旋も変わる。
胸椎回旋は、
いつでも同じ範囲で起こるわけではありません。
2007年の研究では、
胸椎を屈曲した姿勢から回旋した場合、
中間位や伸展位と比較して
回旋可動域が小さくなりました。
これは、
「姿勢が悪いから回らない」
という単純な意味ではありません。
同じ人でも、
スタートする身体の位置によって
動ける範囲が変化し得るということです。
屈曲位
丸まった位置から回旋する。
中間位
異なる開始位置から回旋する。
伸展位
伸展した位置から回旋する。
POSITION
CHANGES MOVEMENT.
動きを見るときは、開始姿勢も見る。
05 / ASSESSMENT
胸椎回旋を、
どう見る?
条件を変えて、
動きの違いを確認します。
STANDING
立位
普段に近い姿勢で
身体全体の回旋を見る。
SEATED
座位
下肢の影響を変えて
体幹回旋を見る。
LUMBAR LOCKED
四つ這い
腰椎・骨盤の運動を
小さくした条件で見る。
MOVEMENT
実際の動作
トレーニングや競技動作の中で
回旋を見る。
胸椎回旋を評価する方法の一つに
Lumbar-Locked Rotation Testがあります。
2012年の研究では、
健常成人に対する複数の胸椎回旋測定方法について
良好な測定信頼性が報告されています。
また2024年には、
首の痛みがある参加者を対象とした研究でも、
Lumbar-Locked Rotation Testの
高い検者内・検者間信頼性が報告されています。
ただし、2024年にMRIと臨床測定を比較した研究では、
Lumbar-Locked Rotation Testにも
測定上の誤差があり、
隣接関節の影響を考慮する必要性が示されています。
つまり、
評価方法そのものにも特徴と限界があります。
06 / LEFT & RIGHT
左右差がある。
それだけで問題?
胸椎回旋を測定すると、
左右で差が出ることがあります。
しかし左右差が存在することだけで、
直ちに「悪い状態」と判断することはできません。
利き手、競技、日常動作、
測定姿勢など、
回旋へ影響する条件は複数あります。
また胸椎回旋が大きければ、
必ず身体機能が高いとも限りません。
実際、大学競泳選手を対象とした研究では、
胸椎回旋量と自己申告による肩の痛み・機能障害との
相関は確認されませんでした。
「左右同じにすること」を目的にするのではなく、
その人の動作や目的の中で
左右差がどう現れているかを見ることが重要です。
左右差は身体を見るための情報の一つ。
左右差そのものを症状や問題の原因と断定しません。
07 / TRAINING
胸椎回旋の
トレーニング。
胸椎回旋のトレーニングというと、
四つ這いで身体をひねるエクササイズが
よく紹介されます。
こうした運動自体が
間違っているわけではありません。
2024年の研究では、
立位と四つ這いで行う複数の胸椎回旋エクササイズについて、
実施前後の回旋ROMが比較されています。
ただし、
「胸椎が硬そうだから全員同じドリル」
と考える必要はありません。
CHECK
確認する
どの条件で動きにくいか。
CHANGE
条件を変える
姿勢や支持面を変える。
TRAIN
動かす
必要な方向へ運動する。
INTEGRATE
動作へ戻す
実際の運動で確認する。
08 / NOT ONLY STRETCH
回らないから、
とにかく伸ばす?
身体をひねりにくいと、
「胸椎が硬いからストレッチ」
と考えたくなります。
しかし実際には、
測定姿勢を変えるだけで
回旋量が変わることがあります。
また、
胸椎以外の部位も
回旋動作へ参加しています。
そのため、
ストレッチをするかどうかを決める前に、
どの条件で動きが変わるのかを確認します。
DON’T START
WITH THE METHOD.
方法を決める前に、身体を見る。
09 / WHOLE BODY
胸椎から、
身体全体へ。
胸郭
胸椎は肋骨とともに
胸郭を構成しています。
肩甲帯
上肢を動かすときには
肩甲帯の運動も関わります。
骨盤
立位回旋では
骨盤も運動へ参加します。
股関節
立位やスポーツでは
下肢とのつながりも確認します。
身体をひねる動作は、
胸椎だけで完結しません。
そのためKOMPASでは、
一つの部位だけを切り取るのではなく、
実際の動作の中で身体を確認します。
10 / SCIENCE
分かっていることと、
分からないことを分ける。
胸椎には回旋運動があり、
その運動量は姿勢や測定条件によって変化します。
胸椎回旋を測定する方法についても、
複数の研究で信頼性が検討されています。
一方で、
「胸椎回旋が○度以下だから痛みが出る」
「胸椎を柔らかくすれば肩や腰の症状が改善する」
と一律に断定できるわけではありません。
実際、競泳選手を対象とした研究では、
胸椎回旋量と肩の自己申告による痛み・機能障害との
相関が確認されなかった例もあります。
可動域は身体評価の一つの情報として扱い、
実際の動作や目的と組み合わせて考える必要があります。
11 / STUDIO KOMPAS
「胸椎が硬い」で、
終わらせない。
目的を知る
何をしたいのか、
どこで困っているのかを確認します。
身体を見る
可動域・身体位置・動作を確認します。
条件を変える
姿勢や課題を変えて
動きの違いを見ます。
トレーニングする
必要な運動を選び、
実際の動作へつなげます。
胸椎が硬いから胸椎ストレッチ。
その方法が必要な人もいます。
ただし、
方法を先に決めるのではなく、
現在の身体を見てから方法を選ぶ。
STUDIO KOMPASでは、
身体評価をトレーニングを考えるための
一つの材料として使います。
REFERENCES
参考文献
-
Ignasiak D, et al.
Three-dimensional primary and coupled range of motions
and movement coordination of the pelvis, lumbar and thoracic spine
in standing posture using inertial tracking device.
J Biomech. 2018. -
Edmondston SJ, et al.
Influence of posture on the range of axial rotation
and coupled lateral flexion of the thoracic spine.
J Manipulative Physiol Ther. 2007. -
Johnson KD, Kim KM, Yu BK, Saliba SA, Grindstaff TL.
Reliability of thoracic spine rotation
range-of-motion measurements in healthy adults.
J Athl Train. 2012;47(1):52-60. -
Murofushi K, Mitomo S, Hirohata K, et al.
Comparative Analysis of Thoracic Rotation Exercises:
Range of Motion Improvement in Standing and Quadruped Variants.
Acta Med Okayama. 2024;78(3):251-258. -
Yoshida R, Kuruma H.
Intra- and Inter-rater Reliability of the
Lumbar-Locked Thoracic Rotation Test in Patients With Neck Pain.
Cureus. 2024;16(3):e56407. -
Examining the link between thoracic rotation
and scapular dyskinesis and shoulder pain
amongst college swimmers.
2019.
本記事では、胸椎回旋の測定値を
すべての人へ適用する絶対的な正常値として扱っていません。
測定姿勢・方法・対象者によって結果が異なることを前提に、
身体評価の一つの情報として紹介しています。
STUDIO KOMPAS / SHIBUYA
CHECK.
MOVE.
TRAIN.
身体を見てから、
トレーニングを考える。
胸椎。胸郭。肩甲帯。股関節。体幹。
一つの部位だけで身体を決めず、
現在の身体と目的に合わせて
トレーニングを組み立てます。
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